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老椿図

 訪れた樹のなかで、日本画で描くものはほんの一部だが、そのなかでも二度描くのは珍しい。さらに三度日本画にしたのはこの樹と「神代桜」だけではなかろうか。そのくらいこの「小野家の椿」の表情は豊かで、描くには絶好のモチーフだった。

 絵ができるときには2つのタイプある。一つ目は、最初の構想、下図から完成まで、ほぼイメージ通りできてしまう作品。もう一つはイメージ通りいかず、何度も消したり直したりしながら完成にこぎつける作品。

 この作品は、どちらかというと後者である。背景も当初と大幅に変わったし、最後の最後で赤い椿の花も白に変えた。いわゆる苦労した作品である。作品のできという意味では、どちらが良いとは一概にいえないが、自分自身の問題で言えば、後者の方が印象深い。旅で道に迷いながらやっとたどり着いた目的地という感じだ。展覧会場で自分の作品を初めて見たときも冷や汗が流れた。そんな作品だからこそ、より愛おしいのかもしれない。
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