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「桜樹図(原の閑貞桜)」

 僕がこの桜を訪ねてスケッチしたのは、花のない夏だったが、葉っぱは一部の枝からやっと出ているような状態だったし、二本ある幹の一本は枯死寸前で、根元に布を被せて養生していた。ネットを見ると、老化が進み樹勢がかなり衰えていたために、ここ数年は花を咲かせないようにしているとのことだった。花を咲かせるって事は、樹にとっては相当な負担なのだ。他の樹齢数百年の樹が、春先に一斉に何千、何万という花を咲かせているのは、その意味でも大変なエネルギーを使っているんだろうと思う。

スケッチしながら、せめて絵の中だけでも、この樹に満開に花を咲かせてみたいと思った。現実には叶わないかもしれないが、絵ならできる。
 家に帰ってから、自分で取材した全国あちこちの桜の写真を引っ張り出して花と樹を合わせてみる。枝垂れ桜で、同じくらいの大きさで。と、色々探した結果見つけたのが、「白兎のしだれ桜(山形県長門市)」。幹の太さも似ているし、多分咲くとこんな可憐な花なんだろう。
                              


 「白兎のしだれ桜」という一風変わった名前の桜、こちらもなかなかいい。神社の狛犬も、「狛犬」ならぬ「狛兎」である。花も可憐で神社と桜の佇まいも静かで佳い。ちなみに、この桜は置賜桜街道の中にある一本で、周辺にもたくさんの桜の古木、巨樹がある。それぞれがそれぞれの雰囲気を醸し出していてどれも美しくて素晴らしい。
 こうして、枯れかけている「原の閑貞桜」と満開の花の「白兎のしだれ桜」とのハイブリッド作品が完成する。絵を描きながら自分が「花咲か爺さん」になっている。

「枯れ木に花を咲かせてみせましょう。えいっ。」
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