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月下富士山図屏風

 山梨にはスケッチに出かけることが多く、年に何度も富士山を見る機会がある。絵描きの特性か僕の特性かわからないけど、目に入るものは、なんでもモチーフに見えてしまうので、「これ」なら、「この角度」で「こういう構図」で「こういう風に描くと面白い」とか、「こういうものと組み合わせてみると良い」とか、そういうことを頭の中にシュミレーションする。あるいは、実際に下図を作ってみる。富士山も何度も描こうとシュミレーションしてみたが、どうも、うまく絵にならないのだ。描くことは描けるのだが、どうしても、「末広がりの縁起物の富士」とか、「日本一の富士」やら、「銭湯の壁絵的な富士」やら「日本人の心のふるさと富士」やら、そういうものがぽこぽこと顔を出してきてしまう。

 でも、「富士山」って、実際にそれを目の前にすると一瞬言葉を失う。「これは一体なんなんだ。」という感じで。そんな、富士を前にして言葉を失ったままの、ありのままの富士を描ければと、挑んではみまたが。なかなか、一筋縄では行かないのが「富士山」のような気がする。彼が僕に語りかけてくる。

「小僧、まだまだじゃのう。」
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