膠(にかわ)
絵の具は基本的に、顔料にメディウム(接着剤)を入れて練った状態でチューブに入れられて画材屋で売られています。その際、油を接着剤としていれば「油絵の具」、アラビアゴムなどの樹脂が入っていれば「水彩絵の具」など。メディウムの性質によって、絵の具の性格が決まってきます。日本画の場合は膠(にかわ)を接着剤として用います。膠とは動物の皮や骨などを煮て溶かしたものです。煤を膠で固めたものが墨です。他にも楽器の接合に用いられたりします。他の絵の具と大きく違うのは、膠を自分で顔料に加えて作るところです。(一部チューブ入りのモノもありますが、)そのへんの加減が、画面づくりに大きく関係してきます。
1. 膠液(画面上)
2~3倍に薄めればそのまま使えるようになっていて、とても便利。時間のない時や少量で良い時などはとても重宝します。特に三千本などの膠が腐ることを心配しなければなりませんが、防腐剤が入っているのでその心配がありません。ただし、防腐剤が紙にどのような影響があるかは僕もわかりません。
2. パール膠(中央左)
固着力が強いのですが、強すぎて絵画にはあまり向かないと言われているみたいですが、僕は下の三千本といっしょに混ぜて使います。あくまで、僕の感じですが、三千本だけだと膠の強度が足りないように感じるので、少量加えて用います。特に、夏場、三千本膠は腐りやすいので、腐りにくいパール膠を加えておくことで、強度が落ちるのを防いでいます。(でも腐った膠は使わないようにしましょう。また、夏場、膠は冷蔵庫で保管しましょう。でも、ついつい冷蔵庫に入れ忘れていたりするのですよね。)また、三千本は固着力の割に、膠の色が強く出るので、そのためにも三千本だけで使わずに、パール膠を混ぜています。(まあ、半分気分的なもので、科学的な根拠はありませんので、ご了承ください。)(笑)
3. 三千本膠(画面下)
使い方はパール膠のところで御紹介しましたが、一番オーソドックスな日本画の膠です。やや不純物が多いことから、少し膠色が強いところが欠点です。僕の場合はほとんど単独では使いません。市販の膠液とパール膠との併用です。
また、それ以外にも鹿膠、グルー膠などもあります。
4. 明礬(中央右)
膠液を5倍くらいに薄めて、この明礬を一さじ分くらい入れるとどうさ液ができます。明礬の分量は本によってかなり違いますが、入れ過ぎると、画面がきらきら光るので、あまりいれ過ぎないようにした方がいいかと思います。僕の場合は、鍋一杯(2リットルくらい)で小さじ一杯くらいで、他の技法書にくらべてかなり少ないかもしれません。でも、どうさが効かなかったことはほとんどないので、いつもそのくらいにしています。
三千本膠は雑巾等で巻いてから割りましょう。
僕の場合は、三千本、一本にパール膠を少し入れて、200cc程度のお湯を入れます。それをレンジで30秒くらい暖めます。一旦かき混ぜて、少しさましてまた、30秒くらい。それを5、6回くらいくり返すと、だいたい溶けます。普通は、湯せんしますが、なかなか溶けないし、溶けやすいように前の晩から、水につけておくという手もありますが、忙しくてなかなかそういう具合にもいかないので、レンジは便利です。ただし、1分以上レンジにかけると、吹きこぼれることがありますので気をつけて下さい。
たくさんの技法書に膠と水との分量について書いていますが、僕の場合、継ぎ足し継ぎ足しで、使うことが多く、三千本いくらに水いくらというのがわからないことのほうがほとんどです。なので、僕が一番信用しているのは、膠を人さし指と親指の間につけて、指通しをつけたり離したりをくり返すと、乾燥と共に、粘着力で、だんだん指先がくっついてきます。するっと離れてしまうと、膠が薄いということです。くっついて離れにくいのは膠が濃すぎです。ちょうどいいのは、少し指先に抵抗感が残りながら、離れる感じです。膠は濃すぎると画面の発色が悪くなり、やにっぽくなったり、ひどいと画面が膠のひきでさけてしまったりします。逆に薄いと、絵の具が剥落してしまいます。この辺も経験的に覚えるしかないかもしれません。