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洞杉図

高速道路を走って魚津に。そこから山に入っていく。それまで一般には公開されていなかったというだけあってかなり奥深いが、近くまで行くと樹の周りはきちんと木道が備されている。そして、噂通りというか、情報通りというか、見る杉見る杉、すべて根に大きな石がはまっているのだ。「なぜ....???」。しばらくスケッチしたり写真を撮ったりしていると、たまたま作業服の男性が通りかかったので尋ねてみる。どうやら地元の行政関係の人らしい。「なんでこのあたりの杉はみんな大岩を抱えてるんでしょうか」。するとその人曰く「このあたりは急峻な斜面だから、大岩を抱えていない樹は山水や台風、崖崩れなどで流されてしまい、岩を抱えている樹だけが残ったということらしいのです。大岩の上に根を降ろした杉の赤ちゃんは、岩の表面に結露した露を吸って生長し、長い年月をかけてあのような姿になったと考えられます」。確かに、大岩の上で発芽した小さな苗は数十年、あるいは数百年間、土まで到達するまでに時間がかかったはず。数センチ足らずの苗が、数メートルもある岩の上で、露から水分を吸収しながら、ちょっとずつ、ちょっとずつ育つというのは、なんと気の長い話だろう。一本一本、すべての樹の姿を描くなんて、できるわけないけれど、その気の遠くなるような長い時間の一端を描ければと思いながら筆を走らせた。自然は凄い。つくづくそう思う。

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