藤花図 / 桜劇図 原の閑亭桜 / 桜構図 原の閑亭桜 / 大椎図 称名寺の椎 / 桜櫢図 / 大椎図 平久保の椎 / 流木図 / 大椎図 平久保の椎
僕がこの桜を訪ねてスケッチしたのは、花のない夏だったが、葉っぱは一部の枝からやっと出ているような状態だったし、二本ある幹の一本は枯死寸前で、根元に布を被せて養生していた。ネットを見ると、老化が進み繊勢がかなり衰えていたために、ここ数年は花を咲かせないようにしているとのことだった。花を咲かせるって事は、街にとっては相当な負担なのだ。他の樹齢数百年の樹が、春先に一斉に何千、何万という花を咲かせているのは、その意味でも大変なエネルギーを使っているんだろうと思う。スケッチしながら、せめて絵の中だけでも、この街に満開に花を咲かせてみたいと思った。現実には叶わないかもしれないが、絵ならできる。
家に帰ってから、自分で取材した全国あちこちの桜の写真を引っ張り出して花と樹を合わせてみる。枝垂れ桜で、同じくらいの大きさで。と、色々探した結果見つけたのが、「白兎のしだれ桜(山形県長門市)」。幹の太さも似ているし、多分咲くとこんな可憐な花なんだろう。 / 「白兎のしだれ桜」という一風変わった名前の桜、こちらもなかなかいい。神社の狛犬も、「狛犬」ならぬ「狛兎」である。花も可憐で神社と桜の佇まいも静かで佳い。ちなみに、この桜は置賜桜街道の中にある一本で、周辺にもたくさんの桜の古木、巨がある。それぞれがそれぞれの雰囲気を醸し出していてどれも美しくて素晴らしい。こうして、枯れかけている「原の関貞桜と満開の花の「白兎のしだれ桜」とのハイブリッド作品が完成する。絵を描きながら自分が「花咲か爺さん」になっている。「枯れ木に花を咲かせてみせましょう。えいつ。 / 多摩ニュータウンと聞くと、巨勘などあまりないように思ってしまうが、昔は山や畑だった所を切り開いて造った街なので、あちこちにその土地を祀る神社や寺院があり、街木も大切に守られていたりする。ただ、周りに住宅が押し迫っていて、公園や寺社などの一角に少し窮屈そうに収まっていることが多い。
このシイノキは、その街を中心にして樹冠 よりひと回り大きいくらいの敷地がぽっかりと公園になっている所に立っている。根元に祠が祀られており、もともと鎮守の森だったのだろうか。道路やマンションを造るために 代採された木も多かっただろうと思うと、この街のためによくここを公園として整備し 残してくれたものだと思う。さて、この「平久保のしい」、幹周りメートルと数字を聞いただけでは大した太さとは思えないが、見てびっくり。
「この迫力は何なんだ.....」
おそらく露出した根っこが板根になっていて、その異様さと、うねるようにねじれながら天に向かう幹の凄まじさと、根元の幹周りに比べて上に行くほど大きくなっていく幹の広がりと、そういう大地のエネルギーが天に放たれたような形状をしているからではないかと、スケッチをしながら考える。火山の噴火を植物で造形化するとこんな感じになるのだろう。
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