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震災の先に / 莓根上飛群烏図 / 枯松図
2011年の大震災の後、それまで当たり前のように描いてきたことが描けなくなり、大きなスランプに陥った。二ヶ月間は全く描けなかった。なんとか気を取り直して描いたのが「樹根上飛群鳥図」だった。これまで描いた木と全く違う姿勢でそれらと向き合うことになった2011年3月 東日本大災害が起こった。地震と津波の自然災害だけでなく、原発の事故という未曾有の大災害の前に、僕自身も、また我が家も大きく生活や生きるということの意味を考えざるを得なかった。
それから2ヶ月くらいは絵を描くということができなかった。原発事故の影響を考えると、東京に住み続けることができるのか。あるいは、震災の被害のあったみなさんに何ができるのか、そんなことを考える毎日だった。そんな中で「今できることは何か。」考えて得た結論は、「描くこと」だった。そんな切迫した気持ちで描いたのが、この作品である。右往左往して舞い飛ぶ鳥も自分自身だったし、その真ん中で、それらを見上げ佇む鳥もまた自分だったのかもしれない。この絵をみると、その時の自分がまざまざと蘇る。山中でこの松を見たときは感動した。誰も訪れない小さな山の山頂に立っているのだが、松食い虫のせいだろう。枯死している。だが、枯れて葉っぱはおろか、枝もほとんどなくなっていながら、なお威厳を保ち天に向けて屹立している。壮絶な死。数年して、ここを訪れた時には、その体を地面に横たえ、まさに倒壊していた。誰も来ない山中で僕にスケッチされるのを待っていたのか。その威厳は僕の絵の中で生き続けて欲しいと願う。
P35/P36
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