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鎮魂図 / 早春図

2011年の震災の一月後から何回か東北を訪れた。それまで毎年のように桜を見る旅を続けていたので、その年も福島へ行くことにした。内陸も、所々に痕跡はあって痛々しかったが、それ以上に、津波に襲われた沿岸部を訪れたときは、言葉が出なかった。海沿いの中学校のグランドに校舎と同じに見えるほどの高さに瓦礫が積まれていた。プールにもたくさんのゴミが投げ込まれていた。それらは、つい先日まで、普通に使っていた日用品だった。それが今は、ただのゴミの山だ。学校ももう学校ではなく、ただのゴミ集積場だ。部外者の僕が見ても心が痛む光景に、当事者の皆さんの心中は想像を絶するものだったろうと思う。校舎に取り付けられていた時計も止まったままだった。枯れた植物も、よく見ると美しい姿をしている。自然のあるがままは、あるがままに美しい。冬もまもなく終わろうとしている。そして、春の訪れが。

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