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雪中野仏図 / 野仏図

このお寺の前の道を毎日のように歩きながら、この階段と向こうに見える地蔵堂を描きたいと思っていた。春の若草にしようか、夏の生い茂った草の景色、秋の彼岸花どれもお似合いだったが、結局雪景色に決定。階段の表情にクローズアップできる。お二人の羅漢さんには他から出張参加していただいた。雪の中だが、心なしか気持ちよさそうにも見える。日々是好日。合掌僕の故郷は四国八十八箇所詣りのちょうど四十四番札所大宝寺から四十五番札所岩屋寺の間にある。檀家でもあるし、街中にも遍路道はあり、それなりに歩いてはいるが、巡礼として歩いたことはない。思い立って、四十四番から四十五番まで歩いてみることにした。大した距離ではないが、それでも、現代の風景が全く見えないところを歩くのは新鮮だ。ビルも電線もアスファルトもない。昔の人が歩いたそのままの道である。落ち葉があり、土の壁があり、ぬかるみよけの石が敷いてある。時々、同祖神のような野仏が祀ってある。光の合間から蝶が飛び立つ。百年前の人と同じ風景を見て、同じ空気を吸って、同じ匂いをかいでいる。百年後も同じ風景が残っているだろうか。千年後も同じ空気を吸っているだろうか。いつまでも変わらないものを描きたいと思う。

P45/P46

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