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松鷹図

僕が巨掛を巡り歩くようになって20年近くだが、その間、名だたる松の古木や美しい松林が次々と失われていった。それらの直接的な原因は、松食い虫によるものが多いとされているが、ただ、なぜ、近年その猛威をふるうようになったのか。排ガスの影響も指摘されている。松は、他の植物では生息できないような、水の不足した海岸の砂地や、岸壁の岩場のような土のない場所にも適応し育つことから、「逆境にめげず、力強く成長するシンボル」として、古来、愛でられてきた。そんな「松」でさえ、環境汚染には立ち向かえないのかもしれない。僕自身も、そういう、逆境に立ち向かう強さと同時に、うねうねと伸びる枝に他人事として思えない、性格の悪さと、あのとげとげした葉の意地悪そうな感じや、線で光を受ける光合成の効率の悪さなど、それでいて、のびのびとした力強さも感じて、たくさん観てきた。この作品も、そんな思いで描いてみた。

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