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日本画とは何?

「日本画って何?」という声をよく聞きます。公募展など観に行って、「洋画」の会場と「日本画」の会場を歩いていると「なんで二つは分かれてるんだろう」と素朴な疑問を感じた方も多いのではないでしょうか。さて、その答えはなかなか難しいのですが。簡単に言うと、顔料(色の粉)はそのままでは画面から落ちてしまいます。そこで、接着剤が必要になります。顔料を「油」を接着材として画面につければ「油絵」、「膠」を接着剤にしてつければ「日本画」ということになります。通常、「~画」の「~」の部分は接着剤の名前が来ます。「油彩絵」「アクリル画」「パステル画」などのように。西洋においては技術革新が常でしたから、テンペラ画(接着剤は卵や横脂)、油絵(接着剤は油)、水彩画(接着剤は天然様脂)、アクリル画(接着剤は合成劇脂)と進化したのに対して、日本は古来から現在まで、ずっと「膠」を使い続けてきました。一例を挙げると「煤(すす)」を「膠」で固めたものが「墨」ということになります。また、「膠」は楽器の接着などにも使われてきました。かくいう「膠」は何でできているか。動物の骨や皮、腱などを、ぐつぐつ煮て固めたもので、成分は主にゼラチンからできています。つまり、「膠」の接着剤で絵を描けば日本画、「油や様脂」の接着剤で描けば「洋画」という事になりそうなんですが、実はそう簡単な話でもないのです。一つは「膠」を使って描いたのは、日本に限った事ではないということです。東洋では全般的に「膠」で絵を描いてきました。日本の技術の由来が中国、朝鮮である事を考えれば、あたりまえの事実です。そうすると中国や朝鮮で「膠」で描いたものを「日本画」とは呼べないわけです。二つ目は、最近、成分が「横」でできている「膠」風の接着剤が販売されており、これを使っている日本画家が増えてきましたが、だからといって、その人たちを日本画家ではないとは言いません。そうすると、「日本画」とは何かという最初の疑問に戻る訳です。ここから先は話が長くなるので、問題提起に留めておきたいと思います。一つヒントとしては、「日本画」という言葉が初めて用いられたのは、明治22年と言われています。つまり、それ以前にはなかった言葉ですので、江戸以前の「日本の画家」を「日本画家」と呼ぶ事はあまりありません。例えば、「日本画家」横山大観とは呼びますが、「日本画家」狩野永徳とは呼びません。「日本画家」東山魁とは呼びますが、「日本画家」雪舟とは呼びません。つまり、「日本画」とは比較的新しい言葉だということだけ覚えておいていただければと思います。ということで、ここから先に興味のある方は、どこかで「日本画」について勉強してみてください。もちろ勉強しなくてもかまいません。というより、それでいいのかもしれません。ざっくり「膠」で描いたものが「日本画」だと。大切な事は目の前にある絵画から何を感じるか。何かを感じ取っていただければ幸いです。

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