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藤花國

何百年と生きている掛を前にスケッチをしていると、人間ってなんてちっぽけな存在だろうと思う。その意味では、地球上の生命体の中で最長寿の生き物から受け取るメッセージは大きい。しかし、逆に、桜や藤を見ていると、その掛から毎年、一斉に咲いて散る花の儚さから比べれば、人間はなんてしぶとい生き物だろうとも思う。ふと、足下に目を落とせば、たくさんの雑草が生えていて、それぞれに、美しい形と色をしている。どんな雑草であれ、生きるということはある合理性と機能美を備え、かつ、美しい命の輝きを放っている。植物ばかりではない。土や石だって、長い年月に作られた生命と言えないだろうか。それらをじっと見ていると人と同じように愛おしいと感じる。いや、もしかしたら、人そのものを見ているのかもしれない。僕が出来ることは、その輝きを損なわないで、人々の前に提示することだ。僕の芸はそれ以上でもそれ以下でもない。

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