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和紙(支持体)

 和紙は主に、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)をその紙の特性に合わせて混ぜて漉いたものですが、日本画では、強度の強い楮(こうぞ)を中心に作られています。

 日本画では、雲肌麻紙とか高知麻紙が主に使われていますが、僕は山梨県の西島和紙で麻紙を漉いてもらっています。楮が多いと繊維がはっきりと出て、強度が出ますが、かなり繊維がはっきり出るのと、柔軟性が少ないので、マニラ麻と楮の半々くらいで作ってもらっています。もう少し表面を滑らかにしたい場合は、三俣も入れますが、繊維の感じを残したいので基本的に楮とマニラ麻の混合を使うことが多いです。

 その他には、杉板にも描いていましたが、杉板の場合は和紙以上に下地処理が必要です。

 

 現在の日本画ははほとんどの場合、和紙に描くことが多いと思いますが、絹、綿、麻布、板、土壁などに描く場合もあります。ここでは紙を中心にお話します。

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和紙

左から雲肌麻紙、土佐麻紙、鳥の子紙です。他に楮紙などあります。和紙の主な原料は楮(こうぞ)、雁皮(がんぴ)、三椏(みつまた)などですが、麻や竹などをが混ざっているものもあります。
また、最近は木材パルプがかなり混ざっていると言われています。その意味で、純粋な和紙と言えるか疑問もあります。

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和紙(雲肌麻紙)

名前の通り雲状の模様があるのが特徴です。聞き伝えによりますと、もともと正倉院に収められている紙の多くが麻紙だったようですが、その技法が途絶えていたものを、近代以降の紙漉き職人が復活させたということだそうです。今、日本画で絵を描く場合に、ほとんどの人が、この紙に描いているのではないかと思います。絵の具の紙への食い付きが良く、厚塗にも適した和紙といえます。

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和紙(土佐麻紙)

雲肌麻紙に比べると、表面の雲肌の風合いがなく、感覚的に言うと、フェルトっぽい質感をしています。うす塗りで描く場合には、和紙独特の風合いがないぶん物足りなさを感じますが、ある程度厚塗をしてしまえば、雲肌麻紙とそん色はないと思います。特に厚手あるいは特厚の紙では、裏打ちの必要がないほど丈夫だと言われています。値段が雲肌麻紙に比べて安いのも魅力です。

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和紙(鳥の子紙)

特号から4号まで、雁皮を中心に漉いた紙で、麻紙に比べて、つるったした表面が特徴です。号数が大きくなるほど楮、そしてパルプの割合いが増えるそうです。その下にさらに新鳥の子紙があります。こちらはほとんどパルプのようです。僕は墨やペンなどを使って薄塗りの場合は鳥の子を使って、岩絵の具をある程度使う場合は麻紙に描きます。それぞれの風合いがあるので、両方試してみるのがベストだと思います。

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正直なところ、まだ、正絹の布に描いたことはありません。一回絹に近いメッシュに描いたことはありますが、ドウサを引いた時に、布が随分収縮したことは覚えています。絹は透けるので裏に下地を作るとか、箔を貼ることで、微妙なニュアンスを作ることができます。

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綿布

麻に比べて目が細かく、より、使いやすいと思いますが、麻のように丈夫でないので、パネルに袋ばりするよりも、膠で全面を張り込んで描いた方がいいかもしれません。膠でパネルに張り込み、その上からジェッソなどで下地を作ることもできます。その場合、サンドペーパーなどで磨けば、均一なつるつるした表面にもなります。

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麻は油絵のキャンバスのように目の粗いので、細かな情感のある表現には比較的に向いていないようです。ただ、目が粗い分、マチエールを作るのは向いています。日本画の顔料の場合、下地をいかにみせるかで、マチエールのおもしろさが決まってくるので、この場合ざらざらとした布の質感の上に、重ねると下地が透けておもしろいマチエールができるようです。

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